刀 日本株スクリーナー
有報で見る日本 · 2026年10月14日集計

人手不足をリスクに挙げる上場企業は、
9年で8倍になった。

有価証券報告書の「事業等のリスク」に「人手不足」と書いた上場企業を、2017年度から2026年度まで全社で数えた。さらに、その段落をAIで1つずつ読み、誰の人手不足なのかを分けた。

01 / 推移

23社から184社へ。

0%1%2%3%4%5%6%2017: 23社 / 3,391社 (0.68%)23社20172018: 39社 / 3,702社 (1.05%)39社20182019: 56社 / 3,774社 (1.48%)56社20192020: 105社 / 3,826社 (2.74%)105社20202021: 105社 / 3,869社 (2.71%)105社20212022: 121社 / 3,905社 (3.1%)121社20222023: 133社 / 3,941社 (3.37%)133社20232024: 163社 / 3,943社 (4.13%)163社20242025: 184社 / 3,906社 (4.71%)184社20252026(速報): 154社 / 2,609社 (5.9%)154社2026速報

「事業等のリスク」に「人手不足」と書いた上場企業は、2017年度の23社(0.68%)から、2025年度は184社(4.71%)になった。2026年度は、提出済みの2,609社のうち154社(5.90%)で、まだ増えている。

リスク欄が長くなったせいで、どの語も一様に増えただけかもしれない。そこで、ほとんどの会社が書く「為替」の割合も出した。こちらは57.5%→58.0%で、ほぼ動いていない。

02 / 中身

3社に1社は、取引先の人手不足を書いている。

「人手不足」と書いた段落をAIで1つずつ読み、4つに分けた。自社の人手不足、取引先(運送会社・外注先・工事業者・顧客)の人手不足、人手不足が需要を生む商機、景気の説明として触れただけのもの、の4つ。

伸びが速いのは取引先の人手不足だ。2017年度の5社から2025年度は59社へ、約12倍になった。自社の人手不足(14社→104社、約7倍)より速い。人手不足と書いた会社に占める割合も、22%から32%に上がった。2026年度の速報では34%。

年度社数自社取引先商機景気取引先の割合
2017231454022%
2018392487021%
20195634148125%
202010570279426%
202110569317330%
2022121743412628%
20231337937131028%
20241639448151429%
202518410459191132%
2026*1548853101034%

* 2026年度は速報(提出済みの2,609社。3月決算が中心)。

03 / 業種

陸運業では、5社に1社近くが書く。

業種で見ると、陸運業が最も高い。2017年度は56社中2社だったが、2025年度は61社中11社(18.0%)になった。書いているのは鉄道・バス・タクシー・トラックの会社で、11社中10社が自社の運転士やドライバーの不足として書いている。鴻池運輸は「2024年問題」を名指ししている。

業種201720252025 割合
陸運業2/5611/6118.0%
倉庫・運輸関連0/314/3411.8%
小売業8/28634/32310.5%
鉄鋼0/383/387.9%
ガラス・土石製品0/504/527.7%
食料品0/1178/1246.5%
卸売業1/28019/3046.3%
銀行業0/705/826.1%
精密機器0/473/515.9%
金属製品1/835/885.7%

業種は東証33業種。2025年度に30社以上ある業種だけを、2025年度の割合が高い順に並べた。

04 / 考察

人手不足は運送と建設で起き、ほかの業種に波及している。

人手不足が最も深刻なのは、運送と建設だ。2025年度の有効求人倍率は、全職業の1.10倍に対し、トラックなどの運転を含む「輸送・機械運転従事者」は2.15倍。2024年4月からはトラックドライバーの残業に年960時間の上限がかかり、国の検討会は、何も手を打たなければ2030年に営業用トラックの輸送能力が34.1%足りなくなると試算した。帝国データバンクによると、2025年の人手不足倒産は427件で過去最多、うち建設業が113件、物流業が52件だった。

この2つの業種は、ほかのあらゆる業種に「運ぶ」と「建てる」を売っている。だから人手不足は、そこで止まらずに波及する。取引先の人手不足を書く会社は、2017年度の5社から2025年度は59社になり、その相手の多くは運送会社と工事会社だ。水産物卸の大水は「トラックドライバーの労働時間規制の強化や人手不足」を、通販のハルメクは「商品を配送する運送業者を確保できなくなることによる配送不能」を、中古住宅の東武住販は「工事業者側の人手不足による人件費の上昇」を挙げる。取引先の人手不足を書いた会社に卸売業(10社)と小売業(7社)が多いのは、運んでもらう側だからだろう。

波及した人手不足は、決算書では人件費ではなく、運賃・工事費・外注費として原価に混ざるので見えにくい。人を雇っていない会社にも人手不足が届いていることは、有報のリスク欄で、会社自身が書き始めたことで初めて見えてくる。

05 / 数え方

数え方と注意。

  • 対象は、その年度に有価証券報告書を出した上場企業(証券コードのある会社)。年度は決算期末の年。データはEDINET(金融庁)の有報。
  • 「事業等のリスク」の欄に「人手不足」の文字があるかで数えた。人材不足・労働力不足などの言い換えは数えていない。
  • 2026年度は、2026年8月30日までに提出された分(3月決算が中心)。12月決算などの会社はまだ含まない。
  • 2020年3月期から開示のルールが変わり、リスク欄が長くなった(1社あたりの文字数の中央値は2017年度2,272字、2020年度3,495字)。2020年度の伸びには、その影響も含まれる。
  • 区分はAIが段落ごとに判定した。2025年度の30段落を人が読んで照合したところ、照合できた28段落のうち24段落で一致した。外れたのは「取引先」を「自社」とするものが多く、取引先の社数は少なめに出ている可能性がある。
  • 2017年度の上場企業数(3,391社)は実際より少ない。その後に上場をやめた会社の一部が含まれていない可能性がある。
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