刀 日本株スクリーナー
有報で見る日本 · 2026年10月15日集計

有報のリスク欄でAIに触れる上場企業は、
9年で18倍になった。

有価証券報告書の「事業等のリスク」でAI(生成AI・人工知能を含む)に触れた上場企業を、2017年度から2026年度まで全社で数えた。さらに、AIへの言及内容を6つに分類した。

01 / 推移

31社から572社へ。

0%5%10%15%20%2017: 31社 / 3,391社 (0.91%)31社20172018: 61社 / 3,702社 (1.65%)61社20182019: 91社 / 3,774社 (2.41%)91社20192020: 188社 / 3,826社 (4.91%)188社20202021: 223社 / 3,869社 (5.76%)223社20212022: 246社 / 3,905社 (6.3%)246社20222023: 309社 / 3,941社 (7.84%)309社20232024: 408社 / 3,943社 (10.35%)408社20242025: 572社 / 3,906社 (14.64%)572社20252026(速報): 529社 / 2,609社 (20.28%)529社2026速報

「事業等のリスク」でAIに触れた上場企業は、2017年度の31社(0.91%)から、2025年度は572社(14.64%)になった。2026年度は、提出済みの2,609社のうち529社(20.28%)で、5社に1社に達している。

2026年度に提出済みの会社に限定した場合、前の年度の297社から529社へ、1年で1.8倍に増えた。

02 / 中身

事業の代替を挙げるのは1割。増えているのは、AIの利用に伴うリスクだ。

各社の有報を読み、AIへの言及内容から、以下の6つに分類した。

① 事業の代替

② 対応の遅れ

③ 利用に伴うリスク

④ 課題解決への活用

⑤ 需要の拡大

⑥ その他(言及のみ)

年度社数①②③④⑤⑥③の割合
20173111703570%
2018614251814152%
20199143651622215%
202018886876046264%
20212231077107860284%
20222461184118972274%
202330925109269983348%
20244083914259123964614%
2025572652231011711215318%
2026*52956179152170965729%

* 2026年度は速報(提出済みの2,609社。3月決算が中心)。

AIによる事業の代替を挙げる会社は1割にとどまり、2026年度の速報でも変わらない。最も多いのは対応の遅れで(2025年度39%)、乗り遅れを危惧する会社が多いことがわかる。一方で、AIの利用そのものへの懸念も増えている。利用に伴うリスクを挙げる会社は、2022年度の11社から2025年度は101社、2026年度の速報では152社になった。2026年度に提出済みの会社に限定した場合、1年で約3倍になった。

03 / 業種

情報・通信業では、3社に1社が書く。

業種で見ると、情報・通信業が最も高い。2017年度は339社中18社だったが、2025年度は604社中211社(34.9%)になった。次いでサービス業(21.0%)、電気機器(18.7%)。

書き方は業種で違う。2025年度、情報・通信業では、対応の遅れが53%と半分を超える。AIを自社の技術として追いかける側だからだ。ほかの業種では、課題解決への活用(36%)と、利用に伴うリスク(20%)が多い。

業種201720252025 割合
情報・通信業18/339211/60434.9%
サービス業4/335117/55821.0%
電気機器2/21543/23018.7%
その他金融業0/298/4318.6%
化学0/18626/20013.0%
医薬品0/5510/8012.5%
陸運業0/567/6111.5%
銀行業0/709/8211.0%
食料品0/11713/12410.5%
非鉄金属0/313/339.1%

業種は東証33業種。2025年度に30社以上ある業種だけを、2025年度の割合が高い順に並べた。

04 / 考察

AIで稼ぐのは、つるはしを売る会社だけではない。

AIブームは、よくゴールドラッシュにたとえられる。金を掘った人より、つるはしを売った人が儲けたという話で、AIを開発する企業や、AIを動かす半導体の企業が注目されがちだ。しかしAIは金と違い、それ自体が人の代わりに働く。恩恵は、AIを使う側の会社にも広がる。

その例がリクルートホールディングスだ。2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)、Indeedを中心とするHRテクノロジー事業の売上収益は前年同期比33.2%増、EBITDA+Sマージンは47.4%(前年同期35.0%)で、通期の業績予想を上方修正した。決算説明会では、売上の伸びを、AIが生む付加価値による顧客1社あたりの支出の増加と、利用企業の増加の2つで説明している。そのリクルートも、有報のリスク欄ではAIの普及で「サービス自体が代替されるリスク」を挙げる。AIは同じ会社にとって、リスクにも商機にもなる。

AIを使う側は、もう一部の会社ではない。総務省の令和8年版情報通信白書によると、生成AIを何らかの業務で使う日本企業は86.4%(前回調査は55.2%)。有報でも、AIを課題解決に活用すると書く会社は2025年度で171社あり、うち131社は情報・通信業以外だ。AIの恩恵を受ける非AI企業は、これから数多く出てくるだろう。

05 / 数え方

数え方と注意。

  • 対象は、その年度に有価証券報告書を出した上場企業(証券コードのある会社)。年度は決算期末の年。データはEDINET(金融庁)の有報。
  • 「事業等のリスク」の欄に「AI」「AI」「人工知能」「生成AI」のいずれかがあるかで数えた。英字に挟まれたもの(THAILAND・OpenAI・AIoTなど)は数えていない。機械学習・大規模言語モデルなどの言い換えだけの記載も数えていない。
  • 2026年度は、2026年8月30日までに提出された分(3月決算が中心)。12月決算などの会社はまだ含まない。
  • 2020年3月期から開示のルールが変わり、リスク欄が長くなった(1社あたりの文字数の中央値は2017年度2,272字、2020年度3,495字)。2020年度の伸びには、その影響も含まれる。
  • 6つの分類は、AIが該当する段落を1つずつ読んで判定した。1社に複数の段落があれば、複数の分類に数えた。2025年度の42段落を人が読んで確かめたところ、35段落で判定は妥当だった。外れには、事業の代替を対応の遅れや課題解決への活用に入れたものが多く、事業の代替の社数は少なめに出ている可能性がある。
  • 2017年度の上場企業数(3,391社)は実際より少ない。その後に上場をやめた会社の一部が含まれていない可能性がある。
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