定量条件
刀が独自指標で全社を計算する。
- 有報の主な欄に「航空機」「航空宇宙」「航空エンジン」「民間航空」「ボーイング」「エアバス」のどれかを含む
ボーイングとエアバスは、大量の受注残を抱えたまま増産に苦しんでいる。では、航空機の部品や素材を売上の柱にしている日本の会社はどこか。刀は有報で航空機に触れた220社に絞り、AIが一社ずつ読んで、4社を支持した。
ボーイングは10月27日、737 MAXの生産を月47機で安定させている段階で、月52機に上げるのは2027年後半が目標だと明かした。2026年に737を500機納める目標には届かない見込みだ。
エアバスは2026年に約870機を納める目標を掲げるが、上半期は351機で、残りは後半に偏る。詰まっているのはエンジンの供給だ。A320ファミリーは2027年末に月70〜75機まで増やす計画だ。
受注残は、2026年6月末でエアバスが9,230機、ボーイングが7,468機ある(日本航空機開発協会)。エアバスだけで、今年の納入目標の10年分を超える。
日本の会社の業績にも出ている。航空機エンジンのタービンブレードを作るAeroEdgeは、ブレードを載せたエンジンが前期より32.6%多い847基になった。エンジン部品の加工を受ける放電精密加工研究所は、航空機エンジン部品の需要が増え、売上と営業利益が過去最高になった。
“We want companies that make parts, components or materials built into commercial aircraft or aircraft engines, and for which aircraft is a pillar of revenue, at least 20%.”
日本語訳:民間航空機やそのエンジンに組み込まれる部品・素材を作っていて、航空機向けが売上の柱(20%以上)になっている会社を探したい。
刀のMCP連携を使い、Claudeが条件を組んで実行した。有報の主な欄に「航空機」「航空宇宙」「航空エンジン」「民間航空」「ボーイング」「エアバス」のどれかを書く会社に単語条件で絞り、この企業像を2つの問いにして英語で入れ、問いの順にAIに有報を読ませた。実行とデータの時点は2026年11月1日。
刀が独自指標で全社を計算する。
AIが有報を一社ずつ読み、支持と反証を判定する。
問いは英語で入れ、上から順に判定した。
有報の文章を読み、4社を支持した。
220社の判定は、支持4社・要確認5社・反証あり211社だった。部品のAeroEdge、素材の大阪チタニウム、エンジンのIHI、機体とエンジンの川崎重工の順に並べた。
「当社グループは商業用航空機である、仏Airbus社製A320neoファミリー機と米Boeing社製737MAX機用エンジンである「LEAP」に搭載される、チタンアルミ製の低圧タービンブレードの加工生産・販売を行っております。」有報を見る ↗
「当社チタン事業におきましては、民間航空機運航機数増加に伴うエンジンのMRO(メンテナンス・リペア・オーバーホール)需要が堅調に推移した一方で、民間航空機メーカーを中心としたサプライチェーンにおける在庫調整の影響により、輸出向けの売上高は前年同期比1.5%増にとどまりました。」有報を見る ↗
「当社グループの主力事業である航空・宇宙・防衛事業において、航空機需要が中長期的に増加することが見込まれる中、民間向け航空エンジンでは、運航時間の増加などを背景に、アフターマーケット事業が拡大しています。」有報を見る ↗
「連結売上収益は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品などが増加したことにより、前期に比べ458億円増収の6,136億円となりました。」有報を見る ↗
なお、IHIと川崎重工の航空部門には防衛も入る。ただし両社とも民間機向けの売上も大きく、IHIは民間エンジンの共同開発を担う日本航空機エンジン協会への売上だけで、20.2%を占める。要確認の櫻護謨は、航空機の部品を「航空・宇宙、工業用品」の区分(売上の39.4%)にまとめていて、航空機だけの割合は書かれていない。
1問目(民間航空機の部品や素材を実際に売っているか)で支持されたのは15社だった。そのうち11社は、航空機向けが売上の20%に届かないか、ほかの事業と混ざっていて割合が分からなかった。帝人や住友ベークライトのような素材の大手、救難飛行艇を作る新明和工業(航空機の区分は売上の14.6%)、エンジン部品の加工が伸びた放電精密加工研究所(ガスタービンや防衛と同じ区分)などだ。
残った4社について、航空機向けの大きさと、直近の年度の航空機分の伸びを並べた。
| 会社 | 売上に占める航空機 | 航空機の売上 | 会社全体の売上 |
|---|---|---|---|
| AeroEdge | サフラン向け97% | +41% | +41% |
| 大阪チタニウム | チタン事業86% | +1.5%(輸出) | −9.6% |
| IHI | エンジン協会向け20% | +17% | +1.0% |
| 川崎重工 | 航空宇宙27% | +8.1% | +8.5% |
伸びは直近の年度の前年比。航空機の売上は、AeroEdgeは売上(単体)、大阪チタニウムは航空機向けが中心の輸出、IHIと川崎重工は航空部門の売上だ。4社とも、航空機の分は減っていない。会社全体では、IHIは1.0%増、大阪チタニウムは9.6%減で、航空機がほかの事業の弱さを埋めている。大阪チタニウムの営業利益45%減は、国内の一般産業向けが42.8%減ったことが大きい。
柱が太いほど、航空機の波がそのまま業績に出る。AeroEdgeは、ブレードを載せたエンジンが33%増え、営業利益(単体)は83%増えた。大阪チタニウムは、機体メーカーを中心とした在庫調整で、受注残が積み上がる中でも輸出が1.5%増にとどまった。
エアバスの受注残だけで、今年の納入目標の10年分を超える。それでも、日本の上場企業で航空機を売上の柱にしているのは4社で、ほかの会社では航空機は事業の一部にとどまる。良くも悪くも、航空機の増産と在庫の動きに業績が左右されるのは、この4社だ。
4社のうち、航空機の伸びがいちばん業績に出ているのがAeroEdgeだ。売上と営業利益の推移を並べた。2025年6月期までは単体、2026年6月期は連結、2027年6月期は会社の予想だ。
会社は今期(2027年6月期)、売上を56%増の79.5億円、営業利益を35%増の15.5億円と見込む(8月13日の決算短信)。2026年6月に、機体と防衛の部品を作るオノプラントを買い、その業績が今期から加わる。利益の伸びが売上より小さいのは、新しい材料の量産やエンジン部品の新しい案件で、費用が先に出るためだ。
株価は10月30日に1,156円で、今期の予想利益で計算したPERは30倍だ。2月25日につけた年初来高値2,840円から6割下がり、10月26日には年初来安値をつけた。決算期末(6月末)の株価をもとにしたPERは55倍だった。
有報が書く弱みもある。売上の97%がサフラン1社向けで、ブレードの材料も欧州の1社に頼る。会社は自前で開発した新しい材料の供給を今期から段階的に始め、2028年からはサフラン向けの比率を40%台後半に上げる契約を結んだ。
株価が下がったのは、利益が落ちたからではない。利益は過去最高を更新し、今期も増える見込みだ。下がったのは、その利益につく値段のほうだ。
刀が独自指標で企業を絞り込み、AIが有報を読んで定性条件を判定する。複雑な仮説・企業像に対し、あなたが一社ずつ行っていた選定を、AIが日本株全体で実行する。
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