刀 日本株スクリーナー
AIスクリーニング実例 · 2026年10月21日実行

陸上養殖関連銘柄を、
日本株全体から探した。

高市政権が成長戦略の柱の一つに陸上養殖を据え、異業種の参入が相次いでいる。陸上養殖を事業として手がける会社を探した。刀は有報に陸上養殖と書く18社に絞り、AIが一社ずつ読んで、13社を支持した。

背景

国が、陸上養殖に予算をつけ始めた。

農林水産省は9月11日、「フードテック戦略推進グループ」を新設した。植物工場、陸上養殖、食品機械、新規食品の4領域で世界シェアの拡大を目指し、2027年度の概算要求に502億円の投資枠を盛り込んだ。フードテックは、高市政権が成長戦略で重点投資の対象とする17の戦略分野の一つで、陸上養殖はその中核とされる。政府はフードテック全体で、2040年度までに官民で約2兆9,000億円を投じる計画を掲げる。

背景には、魚の需要と供給のずれがある。国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の水産物の消費は1961年以降、人口の約2倍の速さで増えてきたが、天然の漁獲量は1980年代後半から横ばいだ。2022年には、養殖が初めて漁獲を上回った。その養殖も、海の生け簀は高水温や赤潮、台風の影響を受ける。水産庁は、高水温など海洋環境の変化で、漁業と養殖業の生産量が減る傾向にあるとしている。

陸上養殖は、水槽の中で水温や水質を管理するので、気候の影響を受けにくく、海から離れた場所でも育てられる。国への届出は2026年1月時点で808件と、1年で68件増えた。NTTや日揮、三菱商事、三井物産といった異業種も参入している。日本の会社の業績にも出始めていて、陸上養殖の設備を手がけるポエックは、この分野の売上が前年から大幅に増えたと有報に書いている。

仮説

採算はまだ厳しい。でも、設備を標準化できれば一気に広がるのでは?

海面養殖は、海に生け簀を浮かべて育てる。水温も潮の流れも場所ごとに違い、育て方はその海に合わせるしかない。陸上養殖は、水槽の中に飼育環境を一から作る。同じ設計の施設を、どこにでも建てられるはずだ。

ただ今は、施設ごとに個別に設計していて、初期投資と電気代が重い。水産白書も、陸上養殖は初期投資と電力使用量が大きく、コスト削減が課題だとしている。2026年3月には琉球大学が、陸上養殖の設備をモジュールにして国際標準化を目指す団体を立ち上げた。誰でもどこでも養殖ができるようにするのが狙いだ。

標準化が進めば、施設を建てる費用も、立ち上げにかかる時間も下がる。そうなれば、生産量も売上も一気に増えうる。そこで、有報に陸上養殖と書いた会社を刀で全部読み、誰がどこまで進んでいるかを確かめた。

01 / 入力

探したい企業像。

“We want companies that themselves, or through a subsidiary, joint venture or affiliate, run, build or invest in land-based aquaculture facilities (fish, shellfish or seaweed farmed in onshore tanks, including recirculating systems), or supply systems, equipment or materials made specifically for land-based aquaculture.”

日本語訳:自社か子会社・合弁・関連会社で、陸上養殖(魚・貝・海藻を陸の水槽で育てる。閉鎖循環式を含む)の施設を運営・建設・出資している会社か、陸上養殖専用のシステム・設備・資材を売っている会社を探したい。

有報に「陸上養殖」と書く会社に単語条件で絞り、この企業像を1つの問いにして英語で入れ、AIに有報を読ませた。

02 / 条件

この条件で、日本株全体を調べた。

A

定量条件

刀が独自指標で全社を計算する。

  1. 有報に「陸上養殖」を含む
B

定性条件

AIが有報を一社ずつ読み、支持と反証を判定する。

  1. 自社か子会社・合弁・持分法適用会社が、陸上養殖(魚・貝・海藻を陸の水槽で育てる。閉鎖循環式を含む)の施設を運営・建設・出資しているか、陸上養殖専用のシステム・設備・資材を供給しているか。海面の生け簀だけの養殖、市況や業界の説明で触れただけの場合、施設や製品のない将来の参入計画、やめた・今後は注力しないと書いた取り組みは含めない。

問いは英語で入れた。

約3,800社対象とする上場企業
18社定量条件に一致
13社AIが支持と判定
刀は

有報の文章を読み、13社を支持した。

03 / 結果

支持は13社。手を引いた1社も、原文で確かめた。

18社の判定は、支持13社・要確認4社・反証あり1社だった。以下は、自分で育てる会社と、設備や資材を売る会社の代表から並べ、最後に反証の1社を置いた。

  • RKB毎日ホールディングス9407 · 情報・通信業

    「サーモン陸上養殖部門では、昨年12月に初出荷いたしましたが、工場完成に伴い減価償却費が発生したことに加え、稼働率が限定的であったことなどから、営業損失を計上いたしました。」有報を見る ↗テレビ局の持株会社。子会社の宗像陸上養殖が、福岡県宗像市でサーモンを育てる。工場建設などで、有形固定資産を22億円取得した。

  • Genki Global Dining Concepts9828 · 小売業

    「また、養殖事業においては、2025年9月より熊本県八代市にてサーモンの陸上養殖を開始しており、将来的な店舗への供給に向けた安定的な原材料調達体制の構築を推進しております。」有報を見る ↗回転寿司「元気寿司」「魚べい」の会社。自社の店に回すため、サーモンの陸上養殖を始めた。中期の戦略にも、養殖事業の本格展開を掲げる。

  • エア・ウォーター4088 · 化学

    「・陸上養殖事業では、「地球の恵みファーム・松本」にて、酸素供給機能と脱炭酸機能を一体化したモジュール式システムの試作および実証を進めております。」有報を見る ↗産業ガスの会社。「杜のサーモンプラント」で育てたサーモンを、「恵望サーモン」として北海道で売り始めた。サクラマスの量産化も進める。

  • ポエック9264 · 卸売業

    「株式会社マリンリバーが展開する陸上養殖設備事業では、食料安全保障や持続可能な水産業への社会的関心の高まりを背景に、これまで以上に幅広い業界からの投資需要が着実に増加しており、当該分野の売上高は前年同期比で大幅増を記録しました。」有報を見る ↗水処理機器の専門商社。子会社のマリンリバーが、陸上養殖の設備に使う温度調整機器を作る。この分野の売上は前年から大幅に増えた。

  • 日本特殊陶業5334 · ガラス・土石製品

    「また、バナメイエビ陸上養殖システム事業開発を加速させるべく「株式会社Niterra AQUA」を設立しました。」有報を見る ↗スパークプラグとセンサーの会社。センサー技術で水質を管理する、エビの陸上養殖システムの子会社を作った。

  • Umios1333 · 水産・農林業

    「現在、三菱商事株式会社との合弁による「アトランド株式会社」において取組みを進めているアトランティックサーモン陸上養殖の事業化に向けて、予備飼育検証試験も合わせて行っております。」有報を見る ↗旧マルハニチロ。三菱商事との合弁アトランドで、富山県入善町で、年2,500トン規模のアトランティックサーモンの施設を計画する。山形県遊佐町では、サクラマスの実証試験も行う。

残り8社を見る
  • 荏原製作所6361 · 機械

    「マリン関連では、静岡県内に陸上養殖の実証施設が稼働し、2025年より生産と出荷を開始しました。」有報を見る ↗ポンプ大手。静岡県の実証施設で、2025年から自ら育てて出荷している。

  • ニッスイ1332 · 水産・農林業

    「養殖事業においては、自動給餌制御システムの活用や養殖漁場の沖合化などにより海洋環境への負荷の軽減を図るとともに、天然種苗に依存しない完全養殖の拡大や陸上養殖の推進にも取り組んでいます。」有報を見る ↗水産大手。完全養殖の拡大とともに、陸上養殖の推進を掲げる。大分の研究拠点で、陸上養殖の研究を行う。

  • オカムラ食品工業2938 · 食料品

    「(※)中間魚とは、陸上養殖場にて養殖されている養殖魚を指し、海面養殖用の生簀に移送する前段階の状況となります。」有報を見る ↗サーモンを養殖・加工する会社。海の生け簀に移す前の中間魚を、陸上の循環式施設で大量に育てる研究を進める。

  • 岩谷産業8088 · 卸売業

    「陸上養殖分野における酸素ガスなどの事業拡大に向け、中央研究所に導入した陸上養殖の研究設備を活用し、ヒラメ、バナメイエビに続き、サーモン養殖における酸素富化効果を確認しています。」有報を見る ↗産業ガスの会社。陸上養殖向けの酸素ガスの販売を広げるため、研究設備でヒラメ・エビ・サーモンへの効果を確かめた。

  • 日本システム技術4323 · 情報・通信業

    「・生成AIによるモビリティ関連アプリケーション開発・地方創生事業、自治体向けDX支援・陸上養殖システム開発」有報を見る ↗システム開発の会社。事業の一覧に、陸上養殖システムの開発を挙げている。

  • 理研ビタミン4526 · 食料品

    「海藻の養殖技術研究を活用し、2021年10月に岩手県陸前高田市に「陸前高田ベース」を開設し、「スジアオノリ」の陸上養殖生産を開始しました。」有報を見る ↗わかめなど海藻製品の会社。岩手県陸前高田市の拠点で、海藻のスジアオノリを陸上で育てている。

  • フルハシEPO9221 · サービス業

    「現在は、光合成が旺盛で成長が速く、高いCO2吸収力が期待できる緑藻類「スジアオノリ」に着目し、富山県入善町において海洋深層水を利用した陸上養殖に取組んでおります。」有報を見る ↗木材のリサイクルの会社。富山県入善町で、海洋深層水を使ってスジアオノリを陸上で育てている。

  • 旭有機材4216 · 化学

    「新規事業の創出に向けて、これまで閉鎖循環式陸上養殖システムなど、社会課題の解決に資するテーマについて事業化可能性の検証を進めてきましたが、その結果も踏まえ、今後は当該分野に限定せず、社内外の技術・市場情報の収集や事業部門との連携を通じて、新規テーマの発掘・育成を強化していきます。」有報を見る ↗反証あり。樹脂の配管やバルブの会社。閉鎖循環式の陸上養殖システムの事業化を検証したが、今後はこの分野に限定しないと書いた。

なお、要確認の4社は、閉鎖循環型の陸上養殖システムを開発中のリックス、水質計を陸上養殖に応用する東亜ディーケーケー、陸上養殖関連への参入を目指す段階の東邦アセチレン、市況の説明で陸上養殖の新規参入の増加に触れた築地魚市場。

詳細な結果を見る

結果は2026年10月21日の時点のものです。定性判定には当時の有報を用いていますが、定量スクリーニングには最新の財務データを用いています。

04 / 考察

参入は相次ぐ。利益が出るかは、標準化しだいだ。

有報に陸上養殖と書いた18社のうち、事業として手がけているのは13社だった。残る5社は、手を引いた会社が1社、市況の説明で触れただけの会社が1社、開発中や参入を目指す段階の会社が3社。顔ぶれは、テレビ局、回転寿司、産業ガス、ポンプ、スパークプラグ、ITと、水産会社より異業種のほうが多い。

ただ、陸上養殖で利益が出たと書いた会社はなかった。RKB毎日ホールディングスは初出荷までこぎ着けたが、工場の減価償却費に対して稼働率が追いつかず、営業損失を出した。旭有機材は、陸上養殖システムの事業化を検証した末に、この分野に絞るのをやめた。魚を育てる会社は、どこも出荷を始めたばかりか、その手前にいる。Umiosと三菱商事の合弁アトランドは、2026年3月時点で、施設の立ち上げに向けた増資を予定している段階だ。国内で世界最大級とされるのは、2026年5月に三重県津市で稼働した年1万トン規模の施設だが、運営するピュアサーモンジャパンは上場しておらず、初収穫は2028年の予定だ。

会社本業いまの段階
RKB毎日HDテレビ局出荷開始・赤字
元気寿司回転寿司2025年9月に開始
エア・ウォーター産業ガス北海道で販売開始
荏原製作所ポンプ実証施設で出荷
Umios水産事業化へ予備飼育
旭有機材樹脂配管分野を限定せず

標準化に近い動きを有報に書いたのは、エア・ウォーターだった。酸素の供給と二酸化炭素の除去を一体にしたモジュール式のシステムを、中小規模の施設に入れる前提で試作している。保守のしやすさと、運転にかかる費用の低減を狙った構成だという。

陸上養殖は、海と違って水槽の中の環境を一から作る。設計を標準化できれば、同じ施設を各地に建てられ、生産量も売上も一気に増えうる。今回探したのは、その立ち上げに、もう手をつけている会社だ。

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複雑な仮説も、独自の銘柄選定も。刀が独自指標で企業を絞り込み、AIが有報を読んで定性条件を判定する。あなたが一社ずつ行っていた選定を、AIが日本株全体で実行する。

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