定量条件
刀が独自指標で全社を計算する。
- 有報の「事業の内容」か「経営方針・経営環境」に「省力化」を含む
人手不足による倒産が4年連続で過去最多を更新した。では、顧客の人手を減らす設備やソフトを売り、人手不足を追い風と有報に書く会社はどこか。刀は有報に「省力化」と書く320社に絞り、AIが一社ずつ読んで、26社を支持した。
帝国データバンクによると、2026年度上半期(4〜9月)の人手不足による倒産は225件で、上半期として4年連続の過去最多だった。最も多いのは建設業の70件で、サービス業の63件が続く。
人手を減らす機械の注文も伸びている。日本ロボット工業会によると、7〜9月の産業用ロボットの受注額は3,254億円と前年より46.6%増え、四半期として過去最高になった。ただし伸びを引っ張ったのは電子部品の実装機などで、半導体向けの需要も大きい。
国も、中小企業が人手を減らす設備を買う費用を「中小企業省力化投資補助金」で補っている。パンや菓子の成形機を作るレオン自動機は、製品がこの補助金の対象に登録され、補助金を使った設備の案件が増えたと有報に書いた。
人手不足を有報のリスク欄に書く上場企業は、9年で8倍の184社になった(刀の連載「有価証券報告書で見る日本」)。そのうち19社は、人手不足を自社の商機として書いている。
人手を減らす設備は、浮いた人件費で元を取る買い物だ。人が集まらず、賃金も上がるほど、元が早く取れ、買う理由が強くなる。原油が高いほど省エネ設備が売れやすいのと同じ形だ。
人手不足は、景気が冷えても簡単には戻らない。働く世代の人数そのものが減っているからだ。それなら、人手を減らすものを売る会社の注文は、景気の波より人手不足に連れて動くはずだ。
そこで、顧客の人手を減らすものを事業の柱にしていて、人手不足で需要が増えると有報に書いている会社を、刀で探した。
“We want companies whose main business is selling products or services that reduce the labor their customers need, and whose annual reports say that labor shortages are increasing demand for them.”
日本語訳:顧客の人手を減らす製品やサービスが事業の柱で、人手不足がその需要を押し上げると有報に書いている会社を探したい。
刀のMCP連携を使い、Claudeが条件を組んで実行した。有報の「事業の内容」か「経営方針・経営環境」に「省力化」と書く会社に単語条件で絞り、この企業像を2つの問いにして英語で入れ、問いの順にAIに有報を読ませた。実行とデータの時点は2026年10月31日。
刀が独自指標で全社を計算する。
AIが有報を一社ずつ読み、支持と反証を判定する。
問いは英語で入れ、上から順に判定した。
有報の文章を読み、26社を支持した。
320社の判定は、支持26社・要確認47社・反証あり247社だった。工場や倉庫の機械、AIとソフト、店や病院の現場の順に並べた。
「当社グループを取り巻く事業環境におきましては、物流業界を中心とした人手不足を背景に、自動化・省人化・業務効率化に対する需要や、国土強靭化に関連するインフラ設備需要も底堅く推移し、中国・ASEAN地域を中心とした外需においても堅調な需要水準が維持されております。」有報を見る ↗
「また、当社商品が中小企業省力化投資補助金の対象に登録されたことに伴い、補助金を活用した設備案件が増加しました。」有報を見る ↗
「企業の設備投資については、人手不足を背景とした省力化・省人化投資やDX関連投資などを中心に堅調に推移しました。」有報を見る ↗
「従来、製造ラインの検査工程において検査員の目で行われていた良品/不良品の判定について、人の目に頼らず省力化・自動化を可能にするAI外観検査システム「Phoenix Vision/Eye」の開発・販売を行っております。」有報を見る ↗
「労働力不足が深刻化する物流現場において、ロボットやRFIDとの連携を強化し、倉庫の省人化・自動化を支援。」有報を見る ↗
「このような状況の中、国内は、当社の主要顧客の外食・小売業において、インバウンド需要の堅調な推移や人手不足を背景とした省人化ニーズは継続しているものの、原材料やエネルギー価格、人件費の高騰による厳しい事業環境が継続しているほか、前第4四半期会計期間からのコメの価格高騰による事業者の設備投資計画の延期等への影響もあり、製品需要は軟調に推移いたしました。」有報を見る ↗
「空気圧機器は、人の手による作業の代替に適した自動制御機器であり、労働力人口の減少や人件費の高騰に対処するための自動化・省力化ニーズに合致しています。」有報を見る ↗
「特に食品製造業では、人手不足、低生産性、労災リスクといった課題を抱えており、ロボットによる工程自動化が強く求められております。」有報を見る ↗
「当社を取り巻く経営環境は、様々な地域紛争などによる地政学的リスクや、円安基調の継続によるコスト上昇リスクは存在するものの、人手不足や人件費の上昇により、製造業全体で自動化ニーズが高まっており、FA装置の導入は引き続き重要なテーマとなっております。」有報を見る ↗
「当社は、AI及びIoT等の新しい技術を用いたサービスの提供により、製造業の特定の分野における自動化・省力化に向けたDXを推進しております。」有報を見る ↗
「「sinops」の導入効果は、①発注時間の削減、②欠品率の削減、③値引・廃棄ロスの削減、④在庫金額の削減といった4つの指標を設定しており、ユーザーが導入効果を実感できるサービスとなっております。」有報を見る ↗
「こうした背景から、AIエージェントによる省力化や、柔軟な課題解決を可能とするSaaS導入への関心は極めて高く、基幹業務システムの刷新に向けたIT投資は引き続き活発に推移しております。」有報を見る ↗
「月極駐車場の管理業務は、管理会社にとっては煩雑な割に収益性の低い業務とも言えるため、「アットパーキングクラウド」の導入により、契約・解約を含む駐車場管理業務の省力化が可能となります。」有報を見る ↗
「その結果、レンタルについては堅調に推移するとともに、販売についても中小企業庁による中小企業省力化投資補助金の影響もあって受注が順調に推移したことから、当事業の売上高は3,870百万円(前期比10.4%増)となりました。」有報を見る ↗
「少子高齢化により医療機関における働き手の確保が難しくなるなか、医療機関における受付業務の省力化、効率化を実現するためのサービスとして展開しております。」有報を見る ↗
「特に、日本においては診療報酬の制度上、多くの患者を効率よく診察する必要があり、そのため、問診や受付、会計といった診察以外の業務をICTで自動化・省力化し、医療者が本来の診療業務に集中できる環境を作ることが急務となっています。」有報を見る ↗
「当社グループのソリューションは、インフラ施設・設備等の老朽化の進行や、点検・保守に携わる人材の不足、熟練作業員の高齢化といった社会課題に対し、人が立ち入ることなく点検等を実施できる新たな手段を提供するものです。」有報を見る ↗
「点検業界においては、人件費高騰に伴う点検コストの増加、一方で危険作業におけるノウハウの属人化や労働力不足が発生しているものと当社は認識しており、それに対して、当社はドローン導入のソリューションを提供することで、業務の安全化、効率化、低コスト化の実現という価値を提供しております。」有報を見る ↗
なお、支持26社のうち三機工業・オカムラ・川田テクノロジーズ・テクノフレックス・因幡電機産業・タカミヤ・靜甲の7社は、人手を減らす事業が売上の3〜21%で、事業の柱とは言えないため外した。エヌ・ピー・シーも、主力が太陽電池の製造装置のため外した。ファナックやダイフクなどの大手は、有報の該当欄に「省力化」の語がなく、今回の対象に入っていない。
18社のうち、営業利益が年1割以上伸びている7社を、10月30日の予想PERの高い順に並べた。利益の伸びは有報の営業利益の年率(3年。*は上場から日が浅く2年)、PER(倍)は10月30日の株価と、会社が予想する今期の利益で計算した値だ。
| 会社 | 売るもの | 伸び | PER |
|---|---|---|---|
| VRAIN | AI検査 | 34%* | 38.8 |
| シノプス | 自動発注 | 11% | 16.2 |
| 西部電機 | 搬送設備 | 20% | 13.2 |
| ロジザード | 倉庫ソフト | 16% | 12.5 |
| JRC | コンベヤ | 24%* | 11.8 |
| レオン自動機 | 成形機 | 20% | 9.6 |
| ゼネラルパッカー | 包装機 | 12% | 8.9 |
VRAINを除けば、ソフトの会社もPERは12〜16倍に収まる。目立つのは機械の会社だ。西部電機・JRC・レオン自動機は、営業利益をVRAINに近い年2割のペースで伸ばしているが、PERは9〜13倍で、VRAINの3分の1以下だ。
AIの会社には、期待で値段がつく。ただ、その値段は大きく動く。工場の外観検査をAIで自動にするフツパーは、決算期末の株価ではPERが36倍だったが、株価が下がり、今は19倍だ。
機械の会社の値段が低いのは、景気の波を受けやすい業種と見られているからだ。実際、工場の自動化機器の大手SMCも、営業利益が直近3年で年1割減った。
しかし、人手不足は景気が冷えても戻らない。人手不足による倒産は4年連続で過去最多を更新し、レオン自動機やシーティーエスは、国の省力化の補助金で注文が増えたと書く。人手を減らす機械の注文が、景気より人手不足に連れて動くなら、今の機械の会社の値段は、伸びている利益ではなく、景気の波を見てつけられていることになる。
機械の会社のPERが低いのは、景気が落ちると設備の注文が止まるからだ。では、この中に、景気が落ちても売上が残りやすい会社はあるか。刀MCPで、18社にもう1問だけ聞いた。売上のかなりの部分が、月額の利用料や、据え付けた機械の保守・交換部品のように、繰り返し入る収入だと有報に書いているか。
支持は10社だった。月額で売るソフトの会社が多く、機械の会社で支持されたのはJRCだけだった。考察の表の7社に、繰り返し入る収入の割合(継続収入)と、コロナの年を含む直近7年で最も悪かった年の営業利益率(最低利益率)を並べた。ーは、有報で確かめられなかった、または7年分の数字がないもの。
| 会社 | PER | 継続収入 | 最低利益率 |
|---|---|---|---|
| VRAIN | 38.8 | ー | ー |
| シノプス | 16.2 | 74% | 2.5% |
| 西部電機 | 13.2 | ー | 8.5% |
| ロジザード | 12.5 | 78% | 14.1% |
| JRC | 11.8 | 74% | ー |
| レオン自動機 | 9.6 | ー | 4.1% |
| ゼネラルパッカー | 8.9 | ー | 9.8% |
ロジザードは、倉庫管理のクラウドの利用料が売上の78%を占め、7年で最も悪い年も営業利益率が14%あった。JRCは、売上の74%を占めるコンベヤ事業を、コンベヤ部品の取り替えを収益の源泉とした「安定的なリカーリングビジネス」と有報に書く。どちらもPERは12倍前後で、営業利益を年16〜24%伸ばしている。
レオン自動機は、繰り返し入る売上を有報で確かめられなかった。7年で最も悪い年は営業利益率が4%まで下がり、営業利益は最も良い年の約2割だった。PER9.6倍の安さには、この振れの大きさが映っている。ゼネラルパッカーも確かめられなかったが、最も悪い年も営業利益率は10%近くあった。客が食品や日用品の工場で、景気が落ちても生産が止まりにくいからだろう。
なお、支持10社のうちGENOVAとLiberawareの根拠は、前の年から続く客の売上の割合で、月額の収入とは違う。シノプスは伸び盛りで、最も悪い年の利益率が低く出ている。
人手不足で伸びる会社を探すだけなら、機械もソフトも同じ列に並ぶ。売上の入り方まで聞くと、安い会社の中から、景気が落ちても稼ぎが残りやすい会社が分かれて見えてくる。
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