刀 日本株スクリーナー
AIスクリーニング実例 · 2026年10月11日実行

タンカー運賃の高騰で、
伸びる海運株を探した。

大型タンカーの運賃が、1月初めの約43倍になった。刀は海運業11社の有報を一社ずつ読み、運賃の市況が利益に直接届く会社を探した。支持は0社だった。

背景

タンカー運賃が、1月初めの約43倍になった。

ホルムズ海峡の混乱で、原油タンカーの運賃が跳ね上がった。海運調査会社のPoten & Partnersによると、中東から極東へ原油を運ぶ大型タンカー(VLCC)の運賃は1日130万ドル。1月初めの約3万ドルの約43倍だ。

船の数が減ったわけではない。英国の海運紙ロイズ・リストによると、海峡を通れない原油の積み替えを待つ船が、オマーン湾で7〜10日足止めされている。大型タンカーが足りない分、荷主は貨物を分けて中型船で運び、その運賃まで上がった。待つ船の分だけ、使える船が減った。

ほかの運賃は違う動きをしている。コンテナ船の運賃指数SCFIは9月30日に3,662で、2週続けて下がった。鉄鉱石などを運ぶばら積み船の指数BDIは、10月9日に2,917で、1週間で7.3%下がった。

では、タンカー運賃の高騰で利益が伸びる海運株はあるのか。刀で、海運業11社の有報を確かめた。

01 / 入力

探したい企業像。

“Shipping stocks whose profits rise with tanker freight rates: companies that run ocean-going cargo ships and whose shipping revenue moves directly with spot freight rates rather than being fixed by long-term charters.”

日本語訳:タンカー運賃の高騰で利益が伸びる海運株。外航船で貨物を運び、海運収入が長期契約で固定されず、スポットの運賃市況に直接連動している会社。

業種を海運業に絞り、この企業像を2つの問いに分けて英語で入れ、AIに有報を読ませた。

02 / 条件

この条件で、日本株全体を調べた。

A

定量条件

刀が独自指標で全社を計算する。

  1. 業種:海運業
B

定性条件

AIが有報を一社ずつ読み、支持と反証を判定する。

  1. 外航船(自社保有または用船)を運航し、貨物輸送を主要な事業としているか。
  2. 海運収入の相当部分が、長期の貸船契約や数量輸送契約で固定されず、スポットや短期の運賃・用船料の市況に直接連動しているか。

問いは英語で入れた。船舶代理店・仲介・港湾運営・造船だけの会社や、市況の影響がリスクとして書かれているだけの場合、今後の計画だけの場合は含めない。

約3,800社対象とする上場企業
11社定量条件に一致
0社AIが支持と判定
刀は

有報の文章を読み、支持は0社だった。

03 / 結果

支持は0社。判定と原文を、6社で確かめた。

11社すべてが、外航船を運航しているかを問う1問目を通った。市況に直接連動しているかを問う2問目は、反証あり9社・要確認2社で、支持は0社だった。多くの会社が、有報に長期契約を主体にしていると書いている。以下は、タンカー・ばら積み・コンテナの各社から6社。

  • 共栄タンカー9130 · 海運業

    「当社グループは引き続き大型タンカーを中心に長期貸船契約を主体とする事業運営のもと、各船の運行効率の向上と諸経費の節減に全社を挙げて努めました。」有報を見る ↗反証あり(2問目の反証64%)。大型タンカーを他社に長期で貸す会社で、受け取る貸船料は契約で決まっている。

  • 飯野海運9119 · 海運業

    「前述の営業収益の安定策には、市況変動によるリスクをある程度軽減する一方、市況が逆方向へ変動することから生じたかもしれない利益を逸失している可能性があります。」有報を見る ↗反証あり。ケミカルタンカーやガス船を運航するが、中長期契約が主体。市況が上がったときの利益を逃しうると、有報みずから書いている。

  • NSユナイテッド海運9110 · 海運業

    「当社グループは、鉄鋼原料輸送を中心とした長期契約を志向して事業基盤の安定・強化を図っておりますが、市場ニーズに対応するため中短期契約で運航する船舶の比率が一定程度存在するため大幅な市況変動が大きな損失につながる恐れがあり」有報を見る ↗反証あり(反証73%)。日本製鉄などとの長期契約が柱。ただし中短期契約で運航する船も一定程度ある。

  • 乾汽船9308 · 海運業

    「セグメント利益は、市況が前年同期に比して低い水準で推移した影響に加え、新造船の竣工に伴う減価償却費の増加等により前年同期比1,392百万円減益(△65.1%)の747百万円となりました。」有報を見る ↗反証あり(反証57%)。ただし原文では、利益が市況に直接左右されている。2問目の判定が外れた例だ。連動するのはタンカーではなく、ばら積み船の市況。

  • 日本郵船9101 · 海運業

    「VLCC(大型原油タンカー):市況は大西洋域の貨物需要の増加や中東情勢の緊迫によりホルムズ海峡が事実上封鎖された影響等を受け、前連結会計年度を上回りました。」有報を見る ↗反証あり(反証67%)。タンカーの市況上昇は有報にも書かれた。ただし、タンカーを含むエネルギー事業の増益は82億円。コンテナ船を含む定期船事業は2,245億円の減益だった。

  • 商船三井9104 · 海運業

    「経常損益では、コンテナ船事業の運賃市況下落等により前期比で減益となりました。」有報を見る ↗反証あり。減益の主因はコンテナ船の運賃。タンカーを含むエネルギー事業の経常利益も、1,021億円から555億円に減った。

詳細な結果を見る

結果は2026年10月11日の時点のものです。定性判定には当時の有報を用いていますが、定量スクリーニングには最新の財務データを用いています。

04 / 考察

効くかどうかは、高い運賃がいつまで続くかで決まる。

有報を読んだ判定は0社だった。ただ、これで「海運株にタンカー高は効かない」とは言えない。過去の経常利益を並べると、別の姿が見える。

会社2019年3月期2020年3月期2021年3月期2023年3月期
共栄タンカー8億円10億円3億円3億円
乾汽船−1億円−11億円−13億円134億円
NSユナイテッド海運78億円55億円55億円334億円
飯野海運47億円35億円68億円207億円

2019年10月と2020年3〜5月にも、タンカーの運賃が急騰した。米国による中国COSCOへの制裁と、コロナで余った原油をタンカーにためた時期だ。この2期、タンカーを長期で貸す共栄タンカーの利益は増えず、ばら積みの乾汽船は赤字だった。急騰は数週間から数か月で終わり、契約の更新まで続かなかった。

一方、ばら積みとコンテナの好況が続いた2023年3月期には、「中長期契約が主体」と書くNSユナイテッド海運や飯野海運の利益も3〜6倍になった。高い運賃が契約を結び直す時期まで続くと、長期契約の会社にも届く。動かなかったのは、タンカーを長期で貸すだけの共栄タンカーだった。

今回のタンカー高は、ホルムズ海峡の混乱が解ければ消える種類の上昇だ。利益に届くかは、高い運賃が各社の契約の更新まで続くかで決まる。有報で分かるのは、どの会社がどの市況にさらされているかまでで、上昇がいつまで続くかは分からない。

経常利益は各社の有報の実績で、今後の利益を示すものではない。

あなたの投資先選びを、そのままAIに。

複雑な仮説も、独自の銘柄選定も。刀が独自指標で企業を絞り込み、AIが有報を読んで定性条件を判定する。あなたが一社ずつ行っていた選定を、AIが日本株全体で実行する。

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