刀 日本株スクリーナー
AIスクリーニング実例 · 2026年10月26日実行

不況に強い累進配当銘柄を、
日本株全体から探した。

10年物国債の利率が、約30年ぶりに3%を超えた。では、国債の利率を上回る配当を、不況の年にも減らさずに払えそうな会社はどこか。刀は配当方針に「累進」と書く会社のうち、配当利回り3.5%以上・PER12倍以下で、10年間営業赤字のない33社に絞り、AIが一社ずつ読んで、2社を支持した。

背景

国債で3%もらえる時代になった。

財務省は10月発行の10年物国債の利率を3.1%にした。7〜9月の2.7%から上げ、3%台は1996年8月以来、約30年ぶりだ。日銀は9月の会合で政策金利を1.00%から1.25%に上げた。29〜30日の会合では利上げを見送り、先月の利上げの影響を見極めるとの見方が多い。

景気には不安も残る。米国の9月の雇用者数は前月から2.9万人の増加にとどまり、市場予想の9.0万人を大きく下回った。失業率は4.2%に上がった。IMFは10月の世界経済見通しで、2026年の世界の成長率を3.1%とし、下振れのリスクに紛争の激化、AIへの期待の見直し、貿易摩擦の再燃を挙げた。

日本の会社の側では、配当を減らさないと約束する会社が増えている。澁澤倉庫は2025年5月に年140円を下限とする累進配当を決め、前澤給装工業は同じ年の8月に配当方針を累進配当に切り替えた。いま、有報の配当政策に「累進」と書く会社は369社ある。

仮説

利回りが高いだけの株は、国債に見劣りするのでは?

国債で3%もらえるなら、配当利回り3〜4%の株を持つ理由は、利回りの高さだけでは薄くなる。株にあって国債にないのは、配当が増えていくことだ。

ただ、配当は業績が落ちれば減らされる。不況の年に減配されれば、その年の利回りは国債の利率を下回り、株価も下がりやすい。配当を減らさないという約束も、業績が落ちたときに守れなければ意味がない。

そこで、配当を減らさないと約束していて(累進配当)、その約束を不況の年にも支えられる稼ぎ方をしている会社を、割安な高配当株の中から刀で探した。

01 / 入力

探したい企業像。

“We want companies that commit in their dividend policy not to cut the dividend per share and to maintain or raise it (a progressive dividend), that earn most of their revenue from businesses whose demand is unlikely to fall sharply in a recession, and that look cheap with a high dividend yield.”

日本語訳:配当方針で1株配当を減らさず維持か増配すると約束し(累進配当)、売上の大半を不況でも需要が落ちにくい事業で稼ぎ、配当利回りが高く割安な会社を探したい。

有報の配当政策に「累進」と書き、配当利回り・PER・10年間の営業利益の安定性で絞った会社について、この企業像を2つの問いにして英語で入れ、問いの順にAIに有報を読ませた。

02 / 条件

この条件で、日本株全体を調べた。

A

定量条件

刀が独自指標で全社を計算する。

  1. 有報の「配当政策」に「累進」を含む
  2. 配当利回り(実績)3.5%以上(決算期末の株価をもとにした値)
  3. PER 12倍以下(同)
  4. 過去10年の営業利益の最小値 0円以上(10年間営業赤字なし)
  5. 10年間の利益安定性(最も悪い年の営業利益 ÷ 10年平均)0.5以上
B

定性条件

AIが有報を一社ずつ読み、支持と反証を判定する。

  1. 配当方針に、原則として1株配当を減らさず、維持または増配すると書いているか(累進配当、減配しないと明記するなど)。配当性向やDOEの目標だけで減配しないとは書いていない場合、「安定配当」をめざすとだけ書いている場合は含めない。
  2. 売上の50%以上を、不況でも需要が大きく落ちにくい事業から得ているか。例は、継続的な料金や契約、日用品、規制・公共のサービス、既存設備の保守・修理・更新。顧客の新規の設備投資・新築・ぜいたく品の購入に主に頼る事業、「需要は安定」とだけ書いて中身がない場合は含めない。

問いは英語で入れ、上から順に判定した。

約3,800社対象とする上場企業
33社定量条件に一致
2社AIが支持と判定
刀は

有報の文章を読み、2社を支持した。

03 / 結果

支持は2社。要確認から2社を加え、上場廃止予定の1社を除いて3社を載せた。

33社の判定は、支持2社・要確認6社・反証あり25社だった。支持の静岡ガスを先頭に、要確認から加えた2社をその後に並べた。

  • 静岡ガス9543 · 電気・ガス業

    「当社は、長期的に企業価値を最大化するため、将来の成長に向けた投資と財務体質強化のための内部留保を行いつつ、累進的配当を基本としながら、業績ならびに株主資本利益率(ROE)と配当性向を乗じた株主資本配当率(DOE)などを総合的に勘案し、継続的な株主還元の充実を図ってまいります。」有報を見る ↗静岡県の都市ガスの会社で、売上の77%がガス。1株配当は2016年の13円から2025年の43円まで毎年増え、コロナ禍の2020年と2021年も増やした。PERは9倍(決算期末の株価をもとにした値)。

  • ニチモウ8091 · 卸売業

    「引き続き現中計で掲げた配当性向35%以上、実質累進配当政策の維持はもとより、当社の持続的な成長に合わせて積極的な株主還元に努めてまいります。」有報を見る ↗判定は要確認。鮮凍魚・魚卵・すり身を中心とする食品の会社で、売上の64%が食品。コロナ禍の2021年3月期は中間配当を見送り、年間配当を前期の半分にした。その後は増配を続け、2026年3月期は年100円。

  • 澁澤倉庫9304 · 倉庫・運輸関連

    「当社は、財務健全性の維持を前提に成長投資を積極的に行ったうえで、業績および将来の見通しに配慮しながら配当性向50%以上を基準に、年間配当金140円(2025年5月12日方針決定時の年間配当額、株式分割後35円)を下限とした累進的な配当を実施してまいります。」有報を見る ↗判定は要確認。倉庫、港湾荷役、陸上と国際の輸送を手がける物流の会社で、売上の93%が物流。1株配当は2020年3月期の12.5円から2026年3月期の56円に増え、コロナ禍の年も減らしていない(いずれも分割後の基準)。

なお、要確認のうち、売上の64%が水産物などの食品のニチモウと、93%が倉庫や港湾荷役などの物流の澁澤倉庫は加えた。足場のレンタルのタカミヤ、人材派遣のウィルグループ、給水装置と住宅設備の前澤給装工業、段ボールと住宅のトーモクは、建設や新築、顧客の採用に左右される事業が大きいため加えていない。支持されたJPMCは、2026年10月に経営陣による買収(MBO)の公開買付けが成立し、上場廃止の予定のため載せていない。

詳細な結果を見る

本レポートは、2026年10月26日時点の有価証券報告書を用いた結果です。

04 / 考察

累進配当を掲げてから、まだ不況を経ていない会社が多い。守れるかは、稼ぎ方で決まる。

33社のうち27社は、原則として配当を減らさないと有報に書いていた。ただ、その27社のうち19社は、不況でも需要が落ちにくい事業で売上の半分以上を稼いでいるとは判定されなかった。建設、不動産、商社、機械、リースなど、景気で注文や取引が動く事業が中心だ。

会社主な事業1株配当(2020年→最新)コロナ禍
静岡ガス都市ガス 77%17円→43円増配
ニチモウ食品 64%50円→100円半分に減配
澁澤倉庫物流 93%12.5円→56円増配

主な事業の%は売上に占める割合。1株配当は分割後の基準にそろえた値で、静岡ガスは12月期、ほかの2社は3月期。ニチモウは2021年3月期に中間配当を見送り、年間配当を前期の半分にした。累進配当を掲げたのは、そのあとの中期経営計画だ。

約束そのものも新しい。澁澤倉庫が累進配当を決めたのは2025年5月、前澤給装工業が切り替えたのは2025年8月。阪和興業は2026年5月の中期経営計画で、配当の下限の目安(DOE)を2.5%から3.5%に上げた。どれも、決めてからコロナ禍のような不況をまだ経ていない。

累進配当という言葉は、まだ不況を一度もくぐっていない約束であることが多い。国債で3%が取れるいま、株で配当を取るなら、配当方針の文言より、その約束を不況の年にも支えられる稼ぎ方かを先に見るべきだ。

あなたの投資先選びを、そのままAIに。

刀が独自指標で企業を絞り込み、AIが有報を読んで定性条件を判定する。複雑な仮説・企業像に対し、あなたが一社ずつ行っていた選定を、AIが日本株全体で実行する。

スクリーナーを開く

ほかの実例

金利上昇の恩恵を受ける銘柄を、銀行以外から探した ストック型収益で、稼ぐ会社 価格決定力のある銘柄を、日本株全体から探した ローツェと同じ型の会社を、日本株全体から探した 割安な国土強靭化銘柄を、日本株全体から探した